NovelJam' 2019 藤井太洋賞 おおくままなみ著『キボウの村』のレビューです。
同居の祖母が亡くなり、孤児院に入った主人公ドリス。ドリスは、14の歳に縫製工場の女工に。
「まじめに働けば、その分給料も弾むよ」。
しかし、現実はそうはならなかった……。
コルセットも余るほどやせたドリスは、ある日、同じ部屋のカテリーナとともに希望の村を目指して、逃亡の旅に出た。
女工哀史+ロードムービー。
祖母に育てられたドリスの生まれや育ちなど、「すでに選択肢がなく、与えられたカードでしか勝負できない」もどかしさが、読んでいて苦しくて、でも、ドリスがどうなるのか気になって気になって、一気に読んでしまいました。
もうどうなるのか気になって気になって(2回目)、あああああ、幸せになってくれドリス……!!
ミステリの風味もあって、すごく爽快な短編でした。とても面白かったです!!
まず、タイトルからすると反対のような最初の文章がすごく引き込まれました。
なんでキボウの村なの!?
と、思わずにはいられません。
私が好きな文章は、もう一つ、パンを食べるくだりです。パンに感情を乗せる表現が素晴らしいですね。
たいして美味しくもないであろうパンに、切なさがトッピングされてこちらも胸が詰まり、つらくなってきます……。
14歳の子供がこんなことになっていて……社会福祉が足りていない。子供はたくさん食べて育つのが仕事ですよ。
なんでこんな目に、と、悲しくなってきますね。労働基準法を整備してくれ!!
賢いとはいえ、まだまだ子供のドリスの扱われ方、心情に、もうドリスのやることにはおおむね肯定的になってしまいます。
「ドリスーーー!! 私的には情状酌量!!」
全力で弁護です。
搾取ダメ絶対。
ドリスが、貧しい自分と豊かな人々を比較して、「与えてくれなかった神様」へ、つのらせる憎しみは、共感しかありませんでした。
わたしは
「どうしたら世界の人が幸せになれるのか」
ということを、久しぶりにまじめに考えてしまいました。
誰かや何かと比較せずに、自分が幸せであることを感じられたなら、どんなにいいことでしょう。
ドリスに比較したら、最近している私のダイエットなど、単なる幸せ太り(太るほど食べられている)。
食べることと、幸せについてちょっと謙虚なきもちになりました。
サスペンス系の小説が好きな方、NovelJamに興味のある方におすすめです!!
余談ですが、あとがきを読んでびっくり。
こんなに読みやすい、洗練された文章なのに小説を書いたのが初とのことです。
とても書きなれている感じがしましたが、なんと……!!
また、クリエイティブに対する情熱が感じられて、とても好きです(私も読むより作り手でいたいです)。
合本だとあとがきがないと思うので、ぜひ、こちらの本を手に取って読んでください。
特に、NovelJamに興味がある方にお勧めです。
きっと、「書くぞ」という気持ちを刺激してくれると思います。
また、本のレイアウト、特に目次がかっこいいです……!!
BCCKSでまた本を作る機会があれば、真似したいと思いました!!
NovelJamに興味のある方は見てみてください。
◆他の方と交換レビューをしています◆※後程更新
鷹村アキラさん担当 『さよならを告げる、その日まで』(ナカタニエイト)
おおくままなみさん担当 『えにし独楽』(鷹村アキラさん)
ナカタニエイトさん担当 『輪が廻る』(しのだ)